「母体保護法」は、母体の生命健康を保護することを目的に、不妊手術・人工妊娠中絶に関する事項を定めた法律です。昭和23年7月13日、現在の「母体保護法」の前身である優生保護法が公布、同年9月11日実施されました。

妊娠人工中絶手術は、「母体保護法」により定められた適応条件のある場合に限り行えます。つまり、患者さまが要望したとしても、「母体保護法」の適応条件に合致していなければ、実施されるべきものではないのです。また、万が一、医師がこの適応条件を守らなかった場合は、「母体保護法違反」として罪に問われることにもなってしまいます。

下記に、「母体保護法」の人工妊娠中絶に関連する箇所を引用します。

第1章 総則

(この法律の目的)

第1条 この法律は、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とする。

(定義)

第2条 この法律で不妊手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で厚生労働省令をもって定めるものをいう。

2 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。

第3章 母性保護

(医師の認定による人工妊娠中絶)

第14条 都道府県の区域を単位として設立された社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。

一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意だけで足りる。

監修

医療法人皓慈会 浅川産婦人科
理事長・院長 浅川恭行

経歴

1993年東邦大学 医学部卒業
1999年社団法人日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
2007年東邦大学医療センター大橋病院 産婦人科講師(病院)
2007年日本産婦人科医会 幹事
2009年医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事
2017年医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事長・院長