古いところでは1979年に「3年B 組金八先生」(TBS)、2006年には、「14歳の母」(日本テレビ)、2015年には、「コウノドリ」(TBS)などで、未成年の妊娠・出産が題材となっていました。まだまだ体も心も未成年が妊娠・出産するとなると、さまざまな問題が待ち受けていることも事実です。では、実際に、日本において、未成年で出産した人、また産むに至らず、人工妊娠中絶をした人はどのくらいいるのでしょうか。厚生労働省が公表したデータを調べてみました。

「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)」によると、平成29年の日本における総出産数は、946,065件。うち母親が14歳以下は37件、15〜19歳までが9,861件でした。

それに比べて、昨年秋に公表された「平成29年度衛生行政報告例の概況(厚生労働省)」によれば、20歳未満の人工妊娠中絶件数は14,128件(内19歳6,113件、18歳2,353件、17歳2,335、16歳1,421件、15歳518件、15歳未満218件)。平成25年度19,359件から毎年、その件数は減少しているとはいうものの、明らかに出産数を上回っていることがわかります。

人工妊娠中絶数の減少は、性教育の実施やコンドームなど避妊具の使用による効果に加え、緊急避妊法(アフターピルの使用)が年々、周知・普及されていることによる影響があると考えられます。そういえば、今年(2019年)3月に、東京都教育委員会が、小・中・高校と特別支援学校の教員向けに性教育の考え方をまとめた教員向けの指導書「性教育の手引」の改訂版を公表したことがメディアで話題になっていました。この手引きでは、すでに中学校で実施されている産婦人科医によるモデル授業を例に、コンドームやピルを使用した避妊方法や人工妊娠中絶などを含む授業内容や実際に授業を受けた生徒によるアンケート結果も載っているそうです。

また、私が幹事を務める日本産婦人科医会でも、日本全国で性教育指導セミナーを開催。性教育のあり方や可能性を日々探求しています。産婦人科医は、これからの日本の性教育を担う大切な役割を担っていると自覚しております。

とはいえ、望まぬ妊娠をし、悩んでいる若い女性がまだいることも事実です。性教育を広め、自分の身体を守るための正しい避妊方法を認知させることはもちろん、もしものときに相談可能な信頼できる産婦人科医の役割はますます大きくなっていくことは間違いありません。

妊娠に悩むようなことがあったときは、できるだけ早く、近くの産婦人科を訪ね、相談してみてください。きっと、あなたに寄り添って一緒に考えてくれるはずです。

監修

医療法人皓慈会 浅川産婦人科
理事長・院長 浅川恭行

経歴

1993年東邦大学 医学部卒業
1999年社団法人日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
2007年東邦大学医療センター大橋病院 産婦人科講師(病院)
2007年日本産婦人科医会 幹事
2009年医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事
2017年医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事長・院長