2019/06/25 更新
止むを得ず中絶をした女性の多くは、身体だけでなく、心にも大きな傷を負っています。「この世の中に生み出すことのできなかったあかちゃんに何かをしてあげたい」と、涙ながらに話されるかたも少なくありません。
そんなとき多くのかたが思い浮かべるのは、水子供養です。水子とは、流産したり、中絶したりにより、世の中に生まれることのできなかった胎児のこと。姿がないうちにすべてが水の如く流れてしまったあかちゃんを、仏教では水子と呼びます。また、親より先に逝ってしまったあかちゃんは、三途の川の賽の河原(さいのかわら)で、親の救いの手を求めているのだそうです。そのあかちゃんを親代わりとなって守り、仏さまのもとへ導いてくださるのがお地蔵さまなのです。
そういえば、先日、人口妊娠中絶手術をされたある患者さんが、体調不良の原因を「水子の霊に取り憑かれているから」と話されていました。もちろん、そんなことはあるはずはありませんが、残念ながら、中絶を悔やんでいるかたにつけ込んで、供養や場合によっては除霊などを売り込んでくる業者も存在するようです。知り合いのお寺のご住職とも話をしましたが、水子に取り憑かれたり、たたりを受けたりするなどは決してありませんから、もし体調が優れないときは、すぐに産婦人科医の診察を受けてください。
さて、水子供養は、お寺によって「合同」と「個別」のふたつの供養があります。実際に供養をしていただく場合のお布施は、お寺によって異なりますが、「合同」の場合は、5,000円から、個別の場合は1万円からを目安に考えるとよいでしょう。とはいえ、「お気持ちで結構です」といわれた場合は、1万円程度を袋に入れてお渡しするとよいと思います。
水子供養は、一般的にはお寺で行われます。菩提寺がある方は、まずはそちらに相談にいけばよいでしょう。また、最近は、水子供養を行ってくれるお寺をインターネットで検索することもできます。その場合は、いくつか候補を選んで、実際に電話したり、訪ねたりして、住職とお話をしてみてはいかがでしょうか。
とはいえ、必ずしも水子供養を行わなくてはいけないというものではありません。例えば、写経をしたり、ご自宅に小さなお地蔵さまを飾ったり、「あなたを忘れないよ」という気持ちを持ち続けることが、あかちゃんは何よりうれしく思っているかもしれません。
監修
医療法人皓慈会 浅川産婦人科理事長・院長 浅川恭行
経歴
1993年 | 東邦大学 医学部卒業 |
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1999年 | 社団法人日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医 |
2007年 | 東邦大学医療センター大橋病院 産婦人科講師(病院) |
2007年 | 日本産婦人科医会 幹事 |
2009年 | 医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事 |
2017年 | 医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事長・院長 |