2019/06/25 更新
そもそも人工妊娠中絶は、母体保護法の第1章第2条第2項において、「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出すること」と定められています。この場合の「生命を保続することのできない時期」は、通常妊娠満22週未満であり、この時期の判断は、個々の事例について優生保護法第14条に基づいて指定された医師によって行われるものであるとされています。
人工妊娠中絶を行うのは、母体への負担を考えると、できれば妊娠初期といわれる妊娠11週目までが良いとされています。妊娠中期以降になると、子宮口を開く処置を行なったうえで、子宮収縮剤を用いて人工的に陣痛を起こし流産させる方法となり、母体への負担はもちろん、精神的にも、金銭的な負担も大きくなるためです。
当院にも、ときどき「まだ、中絶ができるでしょうか?」と青ざめた顔で来院される患者さんがいらっしゃいます。しかし、人工妊娠中絶が可能なのは、母体保護法で定められている満22週未満です。それ以降は法律違反となり、中絶をした方はもちろん、中絶に関わった医師や助産婦も罪に問われてしまいます。つまり22週を超えてしまったら、出産するしか方法は残されていないのです。
海外では初期の中絶薬を販売していて、ネットで入手することもできるようですが、現在のところ日本では認可されていません。また、大量出血などのリスクも報告されており、厚生労働省は注意喚起を行っています。
また、昨今は、万が一、22週を過ぎて、やむなく出産に至り、家庭や金銭的事情からあかちゃんを育てられない場合は、特別養子縁組制度や里親制度もあります。
特別養子縁組は、子どもの最善の利益のために、6歳未満の子どもが育ての親と新しい親子関係を結ぶ縁組のこと。行政機関である児童相談所や民間団体が窓口となって仲介します。
それに対して、里親制度は、生みの親が育てるのが難しい子どもを預かって、一時的に家庭環境で養育を行う制度をいいます。こちらは18歳未満の子どもが対象となり、最寄りの児童相談所や児童センターが相談窓口となります。
最近は、予期せぬ妊娠に悩む人を対象にした無料の相談窓口も開設されています。また、患者さんと一緒に最善の道を考えることが産婦人科医の役割だと思っています。どうぞ、ひとりで悩まずに、私たちを信頼して相談してください。
監修
医療法人皓慈会 浅川産婦人科理事長・院長 浅川恭行
経歴
1993年 | 東邦大学 医学部卒業 |
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1999年 | 社団法人日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医 |
2007年 | 東邦大学医療センター大橋病院 産婦人科講師(病院) |
2007年 | 日本産婦人科医会 幹事 |
2009年 | 医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事 |
2017年 | 医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事長・院長 |