2019/06/25 更新
先日、人工妊娠中絶手術が可能ギリギリな21週目に、中絶を希望される患者さんがいらっしゃいました。「どうしてもっと早く来なかったのですか?」とお聞きしたところ、「お金がなかったから」とポツリ。ここに来るまで、気が気ではなかったことでしょう。
人工妊娠中絶手術は、レイプや暴行などの場合を除いて、パートナーの同意が必要となります。妊娠や中絶をひとりで抱え込むことなく、金銭的な問題も含めて、パートナーと話し合うこと、また一緒にカウンセリングを受けることが何より重要です。もし、ふたりで話すことがためらわれるのであれば、その場に医師や助産婦が同席することも可能ですので、ご相談ください。
中絶という選択は、女性にとっては身を切るような思いのはずです。多くの女性の場合、「中絶すればすべてが解決する」と決断したとはいえ、その後、自分を責めたり、ストレスを感じたりするようです。もし、今はお金がないけれど、事情が許せば出産したい、あかちゃんに愛情を感じているというのであれば、まずは、中絶する、出産する、いずれの場合も、これからかかるお金をシミュレーションしてみましょう。出産に関しては、自治体や健康保険組合から、さまざまな補助もありますから、調べたり相談したりしてみる価値はあるかもしれません。出産はなんとかできそうだけれど、やはり育てられないわというのであれば、中絶以外の選択肢、例えば、出産後に特別養子縁組制度や里親制度などを考えてみることもお勧めします。
先にも書きましたが、人工妊娠中絶手術は、初期、中期ともに、健康保険による診療の対象にはなりません。しかし、中期の人工妊娠中絶手術の場合、健康保険組合の出産育児一時金の対象になりますので、該当する健康保険組合に問い合わせてみましょう。また、病院によっては、「出産育児一時金直接支払制度」を利用することで、入院時に費用を支払わなくてもだいじょうぶな場合もありますので、実際に中絶手術を行う病院に相談してみてください。
また、国税庁のHPには、「妊娠中絶の費用のうち、母体保護法の規定に基づいて医師が行う妊娠中絶に係るものは、医療費控除の対象となります」とありますから、中絶費用が10万円(または年収の5%)を超えた場合は、確定申告の時期に申請すれば、払い過ぎた税金の一部が戻ってきます。
監修
医療法人皓慈会 浅川産婦人科理事長・院長 浅川恭行
経歴
1993年 | 東邦大学 医学部卒業 |
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1999年 | 社団法人日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医 |
2007年 | 東邦大学医療センター大橋病院 産婦人科講師(病院) |
2007年 | 日本産婦人科医会 幹事 |
2009年 | 医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事 |
2017年 | 医療法人皓慈会 浅川産婦人科 理事長・院長 |